#106 落語家 林家木久扇氏

 

新聞記事より

「もともと僕は、落語家になるつもりなんて、少しもなかった」と語るのは、林家木久扇氏。18歳で会社に就職するも、4カ月で退社。漫画家に弟子入りした▼作品が雑誌に掲載され、漫画家として歩み始めた4年目のこと。師匠から、「絵が描けてしゃべれたら売れるぞ、ちょっと落語をやってみたら」と言われた。漫画の取材のつもりで、三代目桂三木助に入門。そして、そのまま落語家になった▼収入の少ない前座時代は、雑誌の挿絵を描き、生活費を工面したことも。苦労はあったが、後悔はないという。「飛び込んだあとで、状況や環境を自分の意に沿うようにしちゃえばいい。『ああ、こっちでよかったんだ』と思える生き方を、自分でつくっちゃえばいいんですよ」と氏。本年、高座生活60周年を迎えた(『イライラしたら豆を買いなさい』文春新書)▼人生、思ってもみなかった道に進むことがある。それを“なぜこんなことに”と嘆くより、“新しい自分になるための舞台”と捉えれば、その瞬間から可能性の扉は開いていく。